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RAGがうまくいかない本当の理由〜なぜ"それっぽい"答えしか出ないのか?〜
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RAG最適化

RAGがうまくいかない本当の理由〜なぜ"それっぽい"答えしか出ないのか?〜

RAG導入後も誤答・無関係な情報が多発する理由と、埋め込み・インデックス・グラウンディングの再設計による解決策を実践事例と共に詳しく解説します。

伊藤 克哉
CEO
8

RAGがうまくいかない本当の理由

なぜ"それっぽい"答えしか出ないのか?

多くの企業がRAG(Retrieval-Augmented Generation)を導入していますが、期待した精度が出ないという声をよく聞きます。RAGシステムが「それっぽいけど正確ではない」答えを返してしまう原因は、主に以下の3つに集約されます。

1. 埋め込みモデルの不適合

汎用的な埋め込みモデルは、業界特有の専門用語や文脈を正しく理解できません。例えば、金融業界の「デリバティブ」と化学業界の「誘導体」は英語では同じ"derivative"ですが、意味は全く異なります。

2. インデックス戦略の欠如

単純なベクトル検索だけでは、複雑なクエリに対して適切な文書を取得できません。キーワード検索とセマンティック検索を組み合わせたハイブリッド検索が必要です。

3. グラウンディングの不足

取得した情報をそのままLLMに渡すだけでは、文脈が失われたり、重要な情報が埋もれたりします。適切な前処理と後処理が必要です。

解決策:三位一体のアプローチ

埋め込みの最適化

  • ドメイン特化型埋め込み: 業界特有の用語や文脈を学習させた埋め込みモデルを使用
  • ファインチューニング: 自社データでモデルを追加学習
  • マルチモーダル対応: テキストだけでなく、表や図も含めた埋め込み

インデックスの再設計

  • ハイブリッド検索: BM25などのキーワード検索とベクトル検索の組み合わせ
  • 階層的インデックス: 文書→セクション→パラグラフの階層構造
  • メタデータ活用: 作成日時、著者、カテゴリなどでフィルタリング

グラウンディングの強化

  • コンテキスト拡張: 取得した情報に関連する背景情報を追加
  • 要約と強調: 重要な情報を要約し、強調表示
  • 信頼度スコアリング: 各情報源の信頼度を評価し、重み付け

実装例:LangChainとLlamaIndexの活用

以下は、これらの最適化を実装するPythonコードの例です:

python
1from langchain.embeddings import HuggingFaceEmbeddings
2from langchain.vectorstores import FAISS
3from langchain.retrievers import EnsembleRetriever
4from langchain.retrievers import BM25Retriever
5
6# ドメイン特化型埋め込みモデル
7embeddings = HuggingFaceEmbeddings(
8    model_name="your-domain-specific-model",
9    model_kwargs={'device': 'cuda'}
10)
11
12# ハイブリッド検索の実装
13vector_store = FAISS.from_documents(documents, embeddings)
14bm25_retriever = BM25Retriever.from_documents(documents)
15vector_retriever = vector_store.as_retriever()
16
17# アンサンブルレトリーバーで結合
18ensemble_retriever = EnsembleRetriever(
19    retrievers=[bm25_retriever, vector_retriever],
20    weights=[0.5, 0.5]
21)

INDXでの実践事例

INDXでは、大手製造業A社のナレッジマネジメントシステム構築において、これらの最適化技術を適用し、以下の成果を達成しました:

  • 検索精度: 従来比80%向上
  • 応答時間: 平均3秒から0.5秒に短縮
  • ユーザー満足度: 85%から95%に向上

まとめ

RAGの精度向上は、単一の要素の改善ではなく、埋め込み・インデックス・グラウンディングの三位一体の最適化によって実現されます。INDXでは、これらの要素を統合的に最適化することで、企業のRAGシステムを「それっぽい」から「正確」へと進化させています。

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